超軽量材料システム
当研究室では、材料の軽さを追及した究極の超軽量材料の研究に取り組んでいます。発泡スチロールやウレタンフォーム等、従来の軽量材料よりもさらに密度が低い10mg/cm3以下の超軽量材料を対象に研究を進めています。ナノカーボン材料をベースにした超軽量材料を作製し、空中浮遊素材や電磁波遮蔽・吸収材料、吸音材料、熱マネジメント材料、構造材料としての可能性を追求しています。そして「超軽量材料により宇宙・空の新時代を切り拓く」を合言葉に、宇宙・航空分野への適用を目指しています。
図 超軽量材料領域
図 現在の研究開発領域
空気に浮く超軽量材料
地球は1気圧の大気で覆われていますので、地上の空気密度は1.293mg/cm3 (0℃)となります。もし空気密度よりも密度が小さく空気より軽い材料があれば、それは空気に浮くのでしょうか。是非以下の動画をご覧ください。
空気より軽い材料をランプの光で温めますと、内部の空気が膨張し周囲空気よりも密度が小さくなることで、材料が空気に浮きます。当研究室では、このような現象を発見し、2021年に世界に先駆けて報告しました1)。このような空気に浮く究極の超軽量材料に工夫をこらすことで、常温中でも空気に浮く材料2)や、空中浮遊時の姿勢制御等を目指しています。空気密度以下でより高強度な材料が実現できれば、将来的には空飛ぶ絨毯も可能かもしれません。
―― 関連論文 ――
- Light-induced levitation of ultralight carbon aerogels via temperature control, Reo Yanagi, Ren Takemoto, Kenta Ono, Tomonaga Ueno, Scientific reports, 11, 1, 1-8 (2021).
- High-speed and scalable combustion fabrication of ultralight carbon nanotube aerogels below air density, R. Yanagi, A. Okuno, T. Ueno, Carbon, 216, 118572 (2024).
―― 関連サイト ――
Youtube チャンネル「超軽量アカデミー」
https://www.youtube.com/channel/UCn5OTPowI1oOT0SecPW1GTA
―― プロジェクト・ご支援 ――
- 公益財団法人 立松財団 一般研究助成 「空気に浮く超軽量材料の開発」, 2020年10月 – 2021年9月
- 公益財団法人 中部科学技術センター 学術・みらい助成 「常温環境下で浮遊する超軽量空中浮遊素材の開発」, 2022年11月 – 2023年10月
- 公益財団法人 永井科学技術交流財団 奨励金 「超軽量空中浮遊素材の浮遊姿勢制御」, 2023年3月 – 2024年3月
- 公益財団法人 池谷科学技術交流財団 単年度研究助成 「空気より軽い素材を用いた空中浮遊オブジェの提案」, 2024年4月-2025年3月
- 一般財団法人 新素材情報財団 「3D造形技術によるカーボンナノチューブ超軽量空中浮遊素材の作製」, 2024年4月-2025年3月
宇宙機・エアモビリティ向けの超軽量電磁波遮蔽・吸収材料の開発
作成中
空飛ぶクルマ・ドローンの騒音低減化に向けた超軽量吸音材料の開発
我々が開発する超軽量材料は高い吸音性能や遮音性能を有しています。特に、1000Hz以下の吸音性能が高い点に特徴があります。500Hzあたりの面密度で比較すると図1に示すように、既存材料と比較して圧倒的に軽量かつ高い吸音性能を示します。
空飛ぶクルマやドローンが今後普及していくと考えられております。しかし、本格的な普及には社会受容性の確保が重要です。特に多くの空飛ぶクルマや大型ドローンが空を飛び交う普及フェーズでは、騒音問題が懸念されており、その対策が必要です。
我々はそのような社会的要求を先取りし、超軽量吸音・遮音材料を活かした空飛ぶクルマ・ドローンの騒音対策の基礎研究を進めております。
そのような活動を以下の動画にまとめておりますので、ご覧下さい。
―― プロジェクト・ご支援 ――
- 名古屋大学指定共同研究、素材メーカー様
- NEDO先導研究プログラム , 「空飛ぶクルマ・大型ドローン用途向け超軽量 吸音・遮音材料の開発」, 2021年5月 – 2022年3月.
- 宇宙航空研究開発機構, JAXA 航空イノベーションチャレンジ2022 powered by DBJ FS , 「次世代空モビリティの騒音を低減する超軽量吸音・遮音材料技術」, 2022年8月 – 2023年3月.
- 宇宙航空研究開発機構 JAXA 航空イノベーションチャレンジ2022 powered by DBJ 共同研究フェーズ, 「超軽量吸音・遮音材料技術を用いた次世代エアモビリティの低騒音化技術の開発 」, 2023年9月-
超軽量材料の社会実装に向けた取り組み
大学で得られた基礎的な成果を、いかに顧客が求める製品へと落とし込み事業化するかは、持続的に大学での基礎研究を継続していくためにもますます重要な課題となっております。製品化を行うためには、マーケットの把握、顧客ニーズの聞き取り、それにスピーディーに応える研究開発能力、事業化していくための資金力、人材、グローバル展開など、越えなければならないハードルは多くあり、簡単ではありません。
しかし、そのようなハードルを越えていこうとする過程で、真に深めるべき基礎技術を確認することができ、大学研究だけでは生まれない幅広い人とのつながり、個の力と組織での協調性が養われることを実感しています。
「超軽量材料により、宇宙・空の新時代を切り拓く」
を合言葉に、新しい時代を切り拓く真の材料技術へと発展させるために、大学発スタートアップを立ち上げ、大学組織に留まらず、社会に広がるステークホルダーを巻き込んで、社会実装に向けた活動を推進しています。
―― 本研究へのご支援 ――
- NIMS, 次期「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の課題候補「マテリアルプロセスイノベーション基盤技術の整備」に係るフィージビリティスタディ(FS)実施に関する調査研究 個別テーマの技術実現性等調査, 「究極の軽さで、宇宙・空の新時代を切り拓く ~超軽量構造材料イノベーションの創出」, 2022年9月 – 2023年3月